寒玉金鈴 仲合、同盟会話
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仲合物語
すれ違う思い
仲間たちはもう眠りについている。私は静かに回廊を通り、休息のため寝室に戻ろうとしていた。
無剣:(……あれ?まだ明かりがついてる)
金鈴の部屋の扉は閉まっているが、窓に映った人影をみると、彼はまだ寝ておらず、机の上で何かを書いているようだ。
無剣:まだ寝ないの?
私は扉の近くで彼に聞いた。蝋燭の灯りに照らされた彼の顔を窺う。
寒玉金鈴:もうすぐです。あなたも早めにお休みください。
もう言いつつも、何か書いている手の動きは止まっていない。偶然視界に入ったその紙には古墓の文字が見えた。
寒玉金鈴:じゃあ、お先に。あなたも早く休んで。
寒玉金鈴:……
寒玉金鈴:あ……ちょっと待って。
金鈴は突然、内気な声音で私を呼び止めた。
無剣:ん?どうした?
寒玉金鈴:あなたにあげたいものがあるんだ。
無剣:ほぉ?
金鈴は机から小箱を取り出した。
寒玉金鈴:これは……古墓の蜂蜜なんだ。
寒玉金鈴:僕からじゃなくて……これは祖師からの贈り物です……
私は金鈴から小箱を貰った。
無剣:ありがとう、です!
寒玉金鈴:いえ、お礼なんて……そろそろ寝ましょう、お休みなさい。
無剣:分 か り ま し た 。
無剣:そうだ……
私は一つ大事なことを思い出した。
寒玉金鈴:……どうした。
無剣:確か、私が剣塚に帰るまで一緒にいるって言ってたわよね。
金鈴はそれを聞いて、顔が少し赤くなった。
寒玉金鈴:……そうだったっけ。僕は……覚えてないけど。
金鈴の表情は少し不自然に見える。
無剣:うん、でも約束はもう果たしたし、もし……
無剣:もしあなたが古墓に帰りたいのなら、私は止めないわ。
寒玉金鈴:ねぇ……
無剣:どちらにしても、この部屋はあなたのために空けておくから。
無剣:いつか剣塚に来たくなったら、いつでも来てちょうだい。
寒玉金鈴:わかった。それじゃ……おやすみなさい。
迫る危機
金糸:剣塚は居心地がいいね。仲間も強い人ばかりで、私は剣塚が好きです!
ハチ:それはわかるけど、でも古墓を守るのが私たちの責務じゃないのかな?いずれは古墓に戻るでしょう?
金糸:うん……金鈴、君はどう思う?
寒玉金鈴:俺は……
金鈴の返事を聞く前に、後から来たもう一人が彼らの会話を断ち切った。
流光:おい……君宛の手紙だ。
流光は金鈴に手紙を渡した。
金糸:祖師からの用件ですか?
流光:フン……
寒玉金鈴:ただの挨拶だけだよ。あなたたちもしっかり修練しないと、このままじゃ自分自身すらも守れないよ。
それを聞くと、古墓派の弟子たちは各々の修練に向かった。私は少しため息をつき、その場を離れようとした。
私が庭から離れようとした時、金鈴の声が聞こえた。
寒玉金鈴:一つの場所に馴染んでしまったら、変わりたくないのも当然でしょう……
それから数日、たまに金鈴に会うこともあったが、なぜか彼は私の視線を避けているようだった。私はその理由を漠然と理解しているものの、どうしたらいいのか迷っていた。そうこうしている内に、剣塚に危機が生じた。
一部の敵が剣塚に錯乱攻撃を仕掛け、巡回中の仲間が数人、敵の暗器にやられた。
さらに問題なのは、その暗器に毒が塗られていることだ。攻撃を受けた仲間は顔を仰櫛、苦痛に顔を歪めている。
私が来た時には、剣塚の皆は既に彼らの傷口に簡単な処置をしていた。その傷口を見た私は眉をひそめずにはいられなかった。
無剣:この毒は……
寒玉金鈴:それは……
無剣:金鈴……心当たりがあるの?
寒玉金鈴:……はい。
金鈴は唇を噛み、顔色も暗くなった。
寒玉金鈴:この毒はとても危険なもの……彼らはかすり傷だけで幸いだった。もし直接刺されていたら、今頃はもう死んでいただろう。
無剣:解毒の方法は知っているの?
寒玉金鈴:……うん。でも僕は解毒剤を持っていない。
無剣:じゃあ……
寒玉金鈴:あなたは負傷者の手当てを、僕は……古墓に行ってくる。
無剣:待つんだ。
無剣:同行する。
寒玉金鈴:……いえ。
無剣:敵が待ち伏せしているかもしれないわ、あなた一人だけでは危険よ。
寒玉金鈴:……
寒玉金鈴:わかった、では一緒に向かおう。
心の疎隔
休んでいるときも、彼は一人で頭を垂らし、何かを気にしているようだ。
話しかけてみても彼は端的な返事しかせず、口数も普段より少ない。
二日目の夜。私は焚き火の傍に座り、金鈴の背中を眺めている。
無剣:金鈴……
寒玉金鈴:……
無剣:ありがとう。
寒玉金鈴:なんでもないよ。
無剣:あなたが傍にいてくれなければ、私は……
無剣:私はこんなに早く立ち直れなかった……剣塚にも戻れなかったかもしれない。
寒玉金鈴:いきなりどうしたの?
無剣:今までちゃんと感謝の気持ちを言葉で伝えなかったから。
無剣:旅でも、戦いでも、あなたが傍にいてくれたから……
寒玉金鈴:いや……それは違うよ。
無剣:?!
寒玉金鈴:あなたは自分の力で目覚めの境界を超えた。仲間を集めたのも、剣境を守るのも、それはあなた自身の力だ。
寒玉金鈴:そんなあなたを見ることができて、僕は……
寒玉金鈴:僕は……嬉しい。
寒玉金鈴:でも……
金鈴は顔を伏せて長く沈黙した後、聞こえないほどの小さな声で言った。
寒玉金鈴:僕はまだあなたと一緒にいたい。
無剣:それなら……
寒玉金鈴:ううん、認めたくないけど、今の貴方は普通の人々が手の届かない域にまで達している。それに比べて僕は……
金鈴の瞳は一瞬輝いたように見えた。金鈴は微かな郷愁の笑みを浮かべ、昔のことを懐かしく思い出しているようだ。目覚めたばかりの頃の私はつまづいてばかり、金鈴やほかの仲間たちに助けがあってこそ成長ができたのだ――
今日の「無剣」となるまで。
私たちは無言でお互いを見つめ、私はようやく金鈴の真意を理解できた。
いつの間にか私と金鈴の間には見えない壁が出来てしまい、無意識のうちに二人の間を隔てていたようだ。
無剣:すみません……
寒玉金鈴:謝らないで……
寒玉金鈴:今のままで……それで十分だよ……
無期の約束
金鈴も相変わらず言葉数は少ないが、彼が後ろから支えてくれているという気配を感じることができる。
私は自分の思いを金鈴に伝えたかったが、その気配を見いだせないでいた。
しかしこの日、ようやく気持ちを固めた私は、剣閣で金鈴を待つことにした。
寒玉金鈴:……
寒玉金鈴:僕を待っていたの?
無剣:そうだね。
無剣:結構待たされたわ。
と言いつつ私は笑った。金鈴は呆れ顔で私を見ながら首を横に振った。
寒玉金鈴:それで、何か話でもあるの?
無剣:ええ、ちょっと話があるのよ。
寒玉金鈴:なに?
無剣:私たちが前に交わした“約束”のこと。
寒玉金鈴:……
金鈴は眉をひそめて黙り込んだ。
無剣:約束は果たしたから、もう剣塚に戻らなくてもいい……けど……
無剣:今は後悔しているの。
無剣:剣塚にはあなたが必要なの。そして私にも……あなたが必要。
無剣:あの日、ずっと一緒に居たいと言ってくれたわよね?
寒玉金鈴:……
寒玉金鈴:……それはあなたの誤解です。
無剣:フフ、誤解でもいいじゃない。
私は金鈴の手を繋いで、笑いながら彼を見つめた。
無剣:約束よ。
無剣:ずっとここにいて。
無剣:ずっと私の傍で、私と一緒に剣境を守りましょう。
寒玉金鈴:ま……前みたいに……期限を決めておかないと。
無剣:ほぉ?
無剣:そうね。
無剣:じゃあ……期限は“この世界が終わるまで”にしましょうか。
同盟会話
○○の寒玉金鈴:今の私に……
○○の寒玉金鈴:ついに皆を守る力を身に着けた。
○○の寒玉金鈴:い、いや……まだ何も言ってないけど。
○○の寒玉金鈴:老師が編み出した心法と武芸は精妙の極み。
○○の寒玉金鈴:噂によれば、全真派の開祖でさえ感嘆していたという。
○○の寒玉金鈴:僕たち両派は……ずいぶんと古い付き合いだったね。
○○の寒玉金鈴:拂塵と氷魄の、先の行いは我が一派の恥だ。
○○の寒玉金鈴:老師の命により、あの二人を古墓に連れ戻したいところだけど……
○○の寒玉金鈴:あの裏切り者どもは恐らく自らやって来るでしょう。
判詞
霜の降った一本木の庭には何もなし
雲の模様の入った衣が舞いで踊り
風に吹かれた糸が聞きなれた音を立てる
降る雪は池に落ちてゆき
闇の中で蛍がひそかに障子に這う
朝咲き暮れに落ちる事に侘しさを覚え
前世は花を守る鈴であろう
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SSにて失礼0
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